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目 次
短歌で他人と紙一枚の差がある人間を映す
花の名を知らざるままにたのしむは礼を欠くかと図鑑にさぐる(橋本喜典)
本阿弥書店『歌壇』
2016.2月号
「どこからでも来い」より
その花の名前を憶えてあげなくては、と思ったのである。
なぜなら「礼を欠く」からである。
ちゃんと「図鑑にさぐる」のも魅力的であるが、「花の名を知らざるまま」では「礼を欠く」ここに、虚をつかれた。
短歌を始めたばかりの頃に読んだ一首であるが、この一首によって、わたくし式守は、ますます短歌が好きになったものである。
こんなことを言われれば、人の日常がいったん剝がされるではないか。
この一首を整理してみたい
この一首がおもしろかったのは、理由である。
ちょっと整理してみたい。
どうしてこの理由が、一首を、こうもおもしろくするのか。
「図鑑をさぐる」ただそれだけ
その「花の名を知」るために
「礼を欠く」んだそうな
![橋本喜典「礼を欠くかと」](https://shikimorimisao.com/wp-content/uploads/2020/09/pexels-photo-3789859-232x300.jpeg)
「礼を欠くかと」の魅力
唐突に
短歌のおけいこをはじめます
【草稿】痩せるためだったとしても走るには負担あるかとナンタラカンタラ
【歌作動機】
そろそろやせないとさすがにやばい。
走ろうかなあ。でも、これでいきなり走ったら足腰に負担がかかるなあ。歩くか。
黙っていても足腰に負担がかかっている。
「走るには負担あるかと」と「礼を欠くかと」の非常なちがいをおもう。
お手本を読み直してみよう。
花の名を知らざるままにたのしむは礼を欠くかと図鑑にさぐる
「礼を欠くかと」に心がこもっている。
それも「礼を欠」いたからとて何の咎もない相手に。
だから虚をつかれた。
韻文という「文」で、初句から4句目までどこも欠くことができないようにしている。と同時に、これ以上は要らないようにしている。
より<わたし>を映し出そうとするといいらしい
なんてことはない。
わたしは【歌作動機】を短歌の体裁にしただけなのである。
おけいこをつづけています
スタート地点の【歌作動機】からして間違っていたのではないか。
【歌作動機(の手直し)】
太った。
紅顔の美少年だったのに。←ウソ
やせるにも歩くことからだ。走ればいいところであるが、走るのはかえって足腰を悪くするところまできてしまっている。
時間をかけて太った。
時間をかけて瘦せよう
【草稿(の手直し)】ホニャラホニャララこんなからだの罪滅ぼしに
この方がまだいい。
あ、いや、よくもないのであるが、ただの健康管理を詠んでいない。ついては、<わたし>が、こっちの方が映し出されるだけまだよかろうかと。