前川佐美雄

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前川佐美雄「嬉しくて」原始よりの本能がその心情を理解する

今を狂気の如くに 今を狂気の如くに君が梅雨の夜をひき弾けばピアノ海より深し(前川佐美雄) 短歌新聞社『捜神』(野極(梅雨五十吟))より 同じ時空を生きて恋しくもこれを夢の如くとしておいでなのか。あるいは、伴に「海深」くあ 前川佐美雄「嬉しくて」原始よりの本能がその心情を理解する

前川佐美雄「見よ」現代も戦後も安寧をやさしく包む夕ぐれが

いつの時代でも ゆふぐれの雲くれなゐに染むを見よ未来は一つふた分れせず(前川佐美雄) 短歌新聞社『捜神』(野極(きさらぎの空))より 昭和二十六年の作品。この国が「戦後」と呼ばれる時代にあった短歌である。 この短歌が、戦 前川佐美雄「見よ」現代も戦後も安寧をやさしく包む夕ぐれが

三井修「少年と少女の声に」伸縮自在の<わたし>外延である

生きている内と外との呼応 少年と少女の声に高低のわずかにありてわが前後ゆく(三井修) 角川学芸出版『海図』(筑波嶺)より 一読して清爽の気に搏たれた。 「少年と少女」が前方をこっちに歩いてくるのか、あるいは、背後から抜か 三井修「少年と少女の声に」伸縮自在の<わたし>外延である

糸川雅子「石けりの石わが影のなかを」ありのままのすがたを

ころがる石を詩として拾う 夕暮れに子らが蹴りたる石けりの石わが影のなかをころがる(糸川雅子) 砂子屋書房『糸川雅子歌集』/『水蛍』(日記)より たとえば、歩道を歩いていて、誰かが足でちょっとどかした空き缶がころがる音がき 糸川雅子「石けりの石わが影のなかを」ありのままのすがたを

前川佐美雄「われの後に椅子置かれたり」高精度なセンサーが

短歌の腕の前にハイスペックなセンサーがある 森の樹がみな手を垂れて夜(よ)となる時われの後に椅子置かれたり(前川佐美雄) 短歌新聞社『捜神』(野極(梅雨五十吟))より これ以上は先に行ったらたいへんだ。と、前川佐美雄は思 前川佐美雄「われの後に椅子置かれたり」高精度なセンサーが

前川佐美雄「一つづつ消えてゆく」いのちを人に教えられるか

短歌はいのちの触角があるのか この道の石に一つづつ消えてゆく儚きいのち鳥のこゑして(前川佐美雄) 短歌新聞社『捜神』(野極(神の如き火))より 「この道の石」を見ているとサッと鳥の影がさす。一羽や二羽ではないようだ。鳥の 前川佐美雄「一つづつ消えてゆく」いのちを人に教えられるか