長沢美津

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長沢美津「容易にて」その短歌の前に何をどう思ってきたのか

なぜおもしろい くずすこと容易にて高く積み上げし積み木の上になほ一つ積む(長沢美津) 新星書房『車』(積み木)より なんでまたたかだか積み木を積む歌がおもしろいのだろう。 「くずすこと容易にて」で始まって、結句に「なほ一 長沢美津「容易にて」その短歌の前に何をどう思ってきたのか

三井修「少年と少女の声に」伸縮自在の<わたし>外延である

生きている内と外との呼応 少年と少女の声に高低のわずかにありてわが前後ゆく(三井修) 角川学芸出版『海図』(筑波嶺)より 一読して清爽の気に搏たれた。 「少年と少女」が前方をこっちに歩いてくるのか、あるいは、背後から抜か 三井修「少年と少女の声に」伸縮自在の<わたし>外延である

橋本喜典「この日の三度目を」結句をいかに魅力的にするか

迷惑電話に腹が立っただけの話なのに 勧誘の電話この日の三度目を下ろしてひとり怒りつぶやく(橋本喜典) 本阿弥書店『歌壇』2017.2月号「天地」より 迷惑電話が腹立たしい。要は、そういう内容だ。それだけだ、とも言える。そ 橋本喜典「この日の三度目を」結句をいかに魅力的にするか

長沢美津「あともどりして真上より」偶然に支配された一瞬に

それは人生に失望していたところに 水の底にしづみてゆきし池の鯉をあともどりして真上よりみる(長沢美津) 新星書房『車』(こよみ)より もうすこし眺めたかったんだろうなあ。悔いないように。で、「あともどりし」た、と。 でも 長沢美津「あともどりして真上より」偶然に支配された一瞬に

長沢美津「地図をたたみぬ」短歌の定型に元々自分はいること

自分はすでに短歌に収まっているのか かへり路の旅の終りのひとときを眠りをはりて地図をたたみぬ(長沢美津) 新星書房『車』(帰路)より 昏迷な埃の世界へ戻る境目の、完璧な抒情詩を、わたしは、この一首に得た気がした。 珍しく 長沢美津「地図をたたみぬ」短歌の定型に元々自分はいること