式守 操

小島ゆかり「ここへおいで」どこかに置き忘れた歌が見つかる

なおまだ心の目をみはる 夏みかんのなかに小さき祖母が居て涼しいからここへおいでと言へり(小島ゆかり) 青磁社シリーズ・牧水賞の歌人たち『小島ゆかり』代表歌三〇〇首・大松達知選 『折からの雨』25首より ついきのうは、木枯 小島ゆかり「ここへおいで」どこかに置き忘れた歌が見つかる

森山良太「離島配属」現実を生きる人一人の人生の偉大な価値

神々しいほどの短歌 サクッサクッ 踏む雪鳴ると語るとき生徒ら私語をやめてわれ向く(森山良太) 第51回(2005年)角川短歌賞「闘牛の島」より 神々しいほどの威厳を覚える。 「サクッサクッ 踏む雪鳴る」が神々しいのではな 森山良太「離島配属」現実を生きる人一人の人生の偉大な価値

知らない人の「冬晴の川」と斎藤茂吉の「冬池」の非常な違い

おちいりやすい欠点 橋わたる人影水に映りたり清らに澄みし冬晴の川(知らない人) 角川書店『短歌を作るこころ』佐藤佐太郎「作歌上の注意」より 佐藤佐太郎の著書より引いた一首である。 「おちいりやすい欠点」の例として、佐藤佐 知らない人の「冬晴の川」と斎藤茂吉の「冬池」の非常な違い

大崎安代『象を飼う家』人間であることにうれしくなれる歌集

歓声をあげて おおーという歓声あげて走り過ぐオレンジ色のトンネルの中(大崎安代) 短歌研究社『象を飼う家』(一泊千円)より 目に浮かぶ。音響も耳に聴こえてくるようである。 <わたし>は、トンネルの中で、こうもたのしんでし 大崎安代『象を飼う家』人間であることにうれしくなれる歌集

阪森郁代「朝の無人の部屋」おれには短歌なんて作れないのか

外界と内界 三面に殺(さつ)の文字の散らばるを見たり朝の無人の部屋に(阪森郁代) 角川書店『ナイルブルー』(十月の扉)より 稀ならぬはむしろ「殺」にして、「朝の無人の部屋」こそ、人々の遠くにあるものに錯覚してしまいそうだ 阪森郁代「朝の無人の部屋」おれには短歌なんて作れないのか

長嶺元久「以下が空白」カルテの空白に人の愛情の波紋を呼ぶ

纏綿たる情理 赤き字に「死亡」とわれが記したるカルテは以下が空白となる(長嶺元久) 本阿弥書店『百通り』(むらぎもの)より わたしに「死亡」した母がある。しかし、子のわたしに、現在は、「空白」ではない。わが地上は、「死亡 長嶺元久「以下が空白」カルテの空白に人の愛情の波紋を呼ぶ