生きている現実の言葉/宮沢鉄郎さん/『短歌往来』26年7月号

『短歌往来』2026年7月号の今月の新人をおもしろく読む。
宮沢鉄郎さんの紹介。連作「工学」掲載。

1首引く。

冷や汗のシステムダウン仕事中「狼煙」の確かさ思いにふける(宮沢鉄郎)

ご自分とご自分を巡る世界をこのように詠もうとする姿勢がいい。
眩しい。

1987年生まれ。高知県出身。2012年「修士(工学)」号取得。現在、埼玉県在住、新聞記者(2017年~)。2025年から短歌づくりをはじめる。

連作に添えたプロフィールより

そして、

(前略)
工学と報道、短歌をつなぎ、それぞれの世界の深さを探求していければいいなと考えています。

連作に添えたエッセイより

初句は「冷や汗の」と。
されば、「システムダウン」は大事にならずに済んだのか。
技術という文明は、いかに発達しても「狼煙」なる通信手段の方がはるかに確実だった、そのような側面がないか。

この一首の主格(宮沢鉄郎さん)は、「仕事中」に、そう思わないではいられなかったようだ。

言われてみれば、いかに進歩しても、その技術でかえって人類に危険を及ぼすことがある。であれば、技術以前の時代の方がまだ人類は安全だったのだ。

もう少し踏み込みたい。

読み返す。

冷や汗のシステムダウン仕事中「狼煙」の確かさ思いにふける

現代の科学の無機質な言葉(システムダウン)に、歴史や教科書の中でしか見ることのない原始的な言葉(狼煙)が衝突した。

そして、プロフィールによれば、作者(宮沢鉄郎さん)は、現在、40歳か。この40代という年齢を見落とせない。
「冷や汗の」という初句は、オートマで斡旋した語彙ではない。現場の最前線でトラブルに直面しているビジネスパーソンの焦燥感が宿っているものである。

「狼煙」を、20代の若者が詠めば、ファンタジーや文明批判には読めても、「狼煙の方がまだ……」との大人の深い嘆息にはならない。

この歌には、伝統的な短歌が好む風情はない。
「システムダウン」と「狼煙」の衝突こそは短歌的であるが、作者は、今生きている現実の言葉をそのまま放り込んだ。
結果、結句の「思いにふける」に、どこか他人事のようでいても、トラブルの渦中にいる、責任を持つ者の生々しい手触りを持たせた。

宮沢鉄郎さんにおかれましては、ますますのご活躍を。
ご年齢的にお仕事でいちばんキツイ年代かと。どうぞご無理なく。

佳きお歌を。

式守操

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