
アメリカ大統領は脇役
トランプ支持者の気落ちはわかる、こつそりと先回りする影は見えつつ(高島裕)
ながらみ書房『短歌往来』
2026年6月号
「随想Ⅱ」より
国際政治の動向を見つめている意匠で、しかし、その内実は、人類の構造的な不気味さである。
と、読めた。
この一首は、社会詠と言えば社会詠の枠に収まる歌になるのか。
そうかも知れない。
が、筆者(わたくし式守)には、現代の潜在的恐怖の前で戦慄するのを抑えかねているご自分を詠んでいるもの。
と、読めた。
この短歌で、アメリカの大統領など、ただの脇役に過ぎない。
ということについて以下
民意と指導者
どこの国でも同じだろう。
没落したくない人々がいる。
移民を受け入れます。多様性に価値を置きます。
グローバリズムの背景に、伝統的な白人市民の絶望がある。
トランプ氏は目指していた。
移民は受け入れません。アメリカの労働者と産業を保護します。
トランプ大統領の政策が成功していると見る人は少ないだろう。
しかし、トランプ氏に夢を託している人も確かに存在しているのである。
こっそりと先回りする影
トランプ氏の政策の正否の前に、一部のアメリカ市民の悲嘆は、人間として共感できることはあるのである。
しかし
傷ついている人々。
それを巧みに利用して、さらに不穏な社会へと誘導する手がある。
この一首を、筆者が、社会詠としてではなく、 “人間を描いている”歌(文学において手垢のついた評語であるが)として敬えるのは、作者の高島裕さんが、さらななる歴史の暗転を予感して戦慄している姿があるからなのである。
社会的弱者をハッキングする
現在のSNS(X、TikTok、Instagram。まあそのあたり)は、ユーザーの滞在時間を最大化するように設計されている。
アタリマエだ。
ビジネスとはそういうもので、徹頭徹尾リアリズムである。
弱みにつけこんでくる?
人間は、悲しいことに、正しい情報より自分の怒りや不安を肯定する情報に反応してしまうものだ。
筆者だって警戒しつつもそうなっている。
AIは、ユーザーのこのデータを瞬時に分析するのである。
少しでも長く利用してもらうためだ。
耳に気持ちよく響く声が集まる?
耳障りな声は過剰に攻撃する?
AIは、先回りしているわけだ。
その人が怒るべき対象やその人と同じ意見ばかりを渡すのである。
結果として
本人の気がつかないうちに、世界は、都合のいい少数の味方と多数の敵になっている。
分断の一方の側に閉じ込められてしまう。
高島裕
高島裕という歌人を、筆者(わたくし式守)は大好きであるが、なぜ好きになれるのか。
一つは、ここではそこに踏み込まないが、骨肉の愛の歌の詠み方が、その調べが、音楽で言えば、清澄な管弦楽のようで、読んでいて飽きない。
もう一つは、ここに引いたように、歓迎できない見えざる手による趨勢に、正直におびえておいでのご自分の歌群があることである。
読み返す。
トランプ支持者の気落ちはわかる、こっそりと先回りする影は見えつつ
われわれは、知らず知らずハッキングされていること。
世論が知らず誘導されている側面があること。
されど、AI自体に、悪意などない。AIに感情はない。

こっそりと先回りする影。
これは、
AIを介した社会全体の相互不信なのではないか。
