
あれこれ詮索してしまう
首のうしろのチカチカだった何となく遠ざけていた白いセーター(久保富記子)
ながらみ書房『短歌往来』
2026年4月号
「白き妖精」より
「チカチカ」は、何だかチクチクする、という意味のオノマトペを、この作者の久保富記子さんは、チカチカと言っているのであろうか。
今、首のうしろに、そのチカチカを感じた。このセーターを「何となく遠ざけていた」理由に思い当たった。
「チカチカ」だった。
ま、そんなあたりか。
でも、こうして今回は着ることにした。これを着たくなかったわけではないのだ。
何かがブレーキを踏ませていた。チカチカがいけなかったのだ、と。
白いセーターだったのはたまたまか。
白でなければ、チカチカだって着ていたのか。
セーターが白であるばかりに、作者の気の倦むものがあったのか。
などとあれこれ詮索することに意味があるとも思えないが、でも、この一首のあれこれは無類に楽しい。
なぜ楽しいかについて以下
「チカチカ」というオノマトペの多層性
普通は「チクチク」と言う。作者は「チカチカ」と表現しているが。
「チクチク」は皮膚感覚だ。
が、「チカチカ」だと蛍光灯の点滅のようだ。視覚的な明滅を連想させる。
結果、皮膚感覚と視覚のバグが起きた。
つまり、単に「首のうしろ」の不快感ではないのだ。
脳のノイズだった。
「チカチカ」なるオノマトペは、かくして絶妙に機能した。
原因と結果/時間が遡る
現在:首の後ろに「チカチカ」
過去の心理:「何となく遠ざけていた」
過去の事実:「白いセーター」だった
なんてことはない。
筆者(わたくし式守)は、作者(久保富記子さん)とともに謎解きを追体験したらしい。
ああ、チカチカが遠ざけていたのか、
ついに発見した瞬間に立ち会ってしまった。
おもしろい、の一言に尽きるが、でも……
なぜ「白いセーター」なのか
でも、なぜ「白いセーター」か。
白は汚れやすい。着るのに少し勇気が要る。
汚したくないから遠ざけていた?
と思わせておいて(事実、わたしは、コンマ1秒そう思った)、実は、「チカチカ」だった、
読み返す。
首のうしろのチカチカだった何となく遠ざけていた白いセーター

高尚な理由から世俗的な理由へ。
この落差には、なんともチャーミングな批評性というものがないか。
