石川幸雄の短歌/距離を無効化する稲妻と恐竜/羨むべき紐帯

目安: 約2分

稲妻とLINE

稲妻を写していると「恐竜が生まれそうです」LINEが届く(石川幸雄)

ながらみ書房『短歌往来』
2026年4月号
「小説の中のわたしは」より

作者が稲妻を撮っていると、やはり稲妻を見ている人から「恐竜が」のLINEが。
作者は写真に収めようとしていた。しかし、相手は、撮るよりもまず「恐竜」の言葉をLINEで送ってきた。
一読すると、ま、そんな経過か。

作者は何も、恐竜誕生の瞬間を画像に、なんて思ってもいなかったろう。
それと、お相手の“稲妻に恐竜”、これなんかも、さして新しい発想とは言えまい。

でも、お二人の関係性に、羨むべき紐帯を、筆者は思ったのであるが。

なぜそうとも思えるのかについて以下

関係性の豊かさ/紐帯

作者の石川幸雄さんは、スマホのカメラ(あるいは本格的なカメラなのかも知れないが)を、空に向けて、圧倒的なエネルギーである稲妻を捉えようとしていた。
手元の画面にポップアップメッセージが。

日常の超克

稲妻だよ、稲妻。緊迫した瞬間なんじゃないのか。
ここで、「恐竜が生まれそうです」とは。

どこかユーモラスで、でも壮大なSF的妄想だ。

感性の共振

「恐竜」というモチーフ。古典的だ。

が、お相手には、今、この稲妻を見て、突飛な言動を受け止めてくれるか否かの検証があった筈だ。

「写している」と「生まれる」

視点の反転

作者としては、元々は、ただの自然現象を写していたつもりだった。

心情としてはその程度のニュアンスではなかったのかも知れないが、傍目には、まあその程度で、ところが、相手のLINEによって、なんと自分は神話的な誕生の瞬間に立ち会っているらしい、となったわけだ。

テクノロジーと恐竜で時空が歪む

ここには、かなりのギャップが目に見えてこないか。
巨大な時間が割り込んできた。
と、考えてみるのはどうか。

稲妻を写していると「恐竜が生まれそうです」LINEが届く

石川幸雄の短歌/羨むべき紐帯/距離を無効化する稲妻と恐竜

スマホという手のひらサイズのメカニズムを介して、体感が、宇宙開闢のスケールになった。

こう言っては大きなお世話を承知で、稲妻を一人で写す時間を、孤独で不穏なものと見る人もいようが、

この瞬間、孤独な世界は、一瞬にして親密で温かい世界へと塗り替えられたのだ。

リンク