坪野哲久

コラム

春野りりんと坪野哲久の短歌/木村カエラの「Butterfly」

1なぜ小説ではなくて短歌なのか。なぜ魚屋ではなくて八百屋なのか、とは似て非なる問いである。(以下、思いつくままに)2宮部みゆきを読み漁っていた時に、わたしは、わたしもミステリー系の小説をものして、文壇に打って出たい、などと考えたことがない。...
おすすめの一首

坪野哲久「なおいたましく」人間の内に清き純正を呼び覚ます

はだのしめりか春近きはだのしめりかゆるやかに雨滴ひびけり夜のふけゆくに(坪野哲久)タイガー・プロ『碧巖』(朱)より何かやわらかい絹につつまれて「ひび」いているような印象を持つ。春近き=はだのしめり夜のふけゆく=春近き雪原に一輪の花の如き気品...
おすすめの一首

坪野哲久「きみの素顔に涙したたる」短歌の天質に加味する美

短歌にくるまれた素顔の偉大さすさまじく生き凌ぎける四十年きみの素顔に涙したたる(坪野哲久)不識書院『胡蝶夢』(白うつぎ)より「すさまじく」の初句が、正に「すさまじ」い。坪野哲久は、明治のお生まれである。死体をまたいで歩いた時代もあったであろ...
おすすめの一首

坪野哲久「菜のはなを挿してくれけり」消滅してなお永遠の美

短歌は安易なところに美を生まない菜のはなを挿してくれけり如月のさむきゆふべのまなかひ明る(坪野哲久)邑書林『留花門』(靑圃)よりわたくし式守はただ、この一首の、余すところのない凛冽の気に搏たれて、坪野哲久の「まなかひ」を、時空を超えて共有で...
おすすめの一首

坪野哲久「蝶のつばさ」生命を見つめて美しい幻想が生まれた

短歌は身をめぐる世界を新しくできるのかうつくしきものにやすらふ蝶のつばささだめなき生(よ)のいのりのごとし(坪野哲久)邑書林『留花門』(染慧抄)より短歌をじぶんもつくりたい、となって、わたしは、自己検証を強いられた。言語領域において、わたし...
おすすめの一首

坪野哲久「円の無限のかたち」たのしんだから言葉は生まれた

その上空でリラックスして短歌が感知される円を描きまつたき円の生(あ)れざるをたのしむ円の無限のかたち(坪野哲久)タイガー・プロ『碧巖』(律五章(落首))よりなかなかまんまるに描けない。一つとして同じ円がない。たのしい。平明に言えば、歌の格調...