武藤雅治

おすすめの歌集

望郷の良寛/山形爛藤の杖/武藤正治「異形の良寛」を基に

1故郷に戻る人と戻らない人がいるらしく、乱読の中で知ったことだが、与謝蕪村は帰らなかった。が、松尾芭蕉は帰った。何度も帰ったとか。資質の違いか。そうかなあ。良寛は、故郷に戻った。良寛にとって、故郷(出雲崎周辺)は、かつて自分が挫折した、人間...
おすすめの歌集

良寛の出家は家出だったのか/武藤雅治「異形の良寛」を基に

1良寛は、名主の子だった。あれは出家と言うより家出である、との説は、説得力がある。当時の家父長制の重圧を思えば、である。『異形の良寛 渇きと訪れ』(花伝社)に、著者である武藤雅治さんは、「少年前期から少年後期にかけての未完の連続性、すなわち...
おすすめの歌集

良寛の遁走/無力哀訴の歌が/武藤正治「異形の良寛」を基に

1良寛は、名主の子であった。良寛の生きた江戸時代の名主(庄屋)は、村の政治や税金の管理をおこなった農民の最高責任者である。村の指導者として高い教養や経済力があった。東日本では「名主」、西日本では「庄屋」。なお、東北・北陸では「肝煎」と言われ...
おすすめの歌集

手毬の良寛の真実/その歌は/武藤正治「異形の良寛」を基に

1良寛と言えば、子どもたちと手毬をついている姿を思い浮かべる。いかにも記号的であるが、これは、良寛の代名詞である。だが、良寛を知れば知るほど、彼は、聖人君子などではなく、いや、そうと讃えていい一面もなくはないが、どこか抜けていて、わが人生の...
コラム

人間の器官の短歌/舌に祝祭性が帯びる/武藤雅治の短歌より

1ろれつのまはらなくなつた舌が呼んでゐるのは死者たちの名に違ひない(武藤雅治)桃谷舎『あなまりあ』(口も目も暗いくらい穴だ)より2今にも死にそうな人の話の気もするし、既に死者の話のような気もする。死後の世界から帰還した人の話の気もする。恐怖...
おすすめの一首

武藤雅治「私のオウム」これはメルヘンではない町の非常事態

こんな非常事態もあるこ町内の皆さまに申し上げますが私のオウムをどこかで見かけませんか(武藤雅治)桃谷舎『あなまりあ』「ひよつこりといましかがみのかたすみに」よりこの一首、オウムをインコにしたらおもしろさは半減するように思える。なぜ。インコで...
おすすめの一首

武藤雅治「ウサギさんからメール」短歌にはこんな祈りもある

「カヘルになりました」「カヘルになりました」と、ウサギさんからメールが届かないかしら(武藤雅治)桃谷舎『あなまりあ』「そんなに祈らないでもいいから」よりおもしろい歌とか、たのしい歌がある。が、この一首は、その類の中で異彩のおもしろさ、たのし...
コラム

短歌の生老病死/精神の自由は奪われない/武藤雅治の短歌より

1にんげんとしていきてゆくくんれんはつづけなければどうなるのだらう(武藤雅治)桃谷舎『あなまりあ』「なにかが爆発する恐れに」より2社会の中で、人間として生きるためには、訓練が要る。少年少女から成人して、社会の中で、やがて中堅どころとなる。そ...
コラム

ペンギンは考える葦だった/病になって/武藤雅治の短歌より

1飛べないのか飛ばないのか考へ続けてゐるペンギンがゐるかもしれない(武藤雅治)桃谷舎『あなまりあ』「なにかが爆発する恐れに」より2「考えること」こそが、人間に残された最後の、そして最強の自由である――。筆者(式守)は、確信に近いものとして、...
おすすめの歌集

武藤雅治『あなまりあ』文語定型を踏み越える響きが聴こえる

第1部:騒音と音楽のあいだメロディもリズムもない音楽がある。ただ打楽器を打ち鳴らしているだけとか、演奏には聴こえない金管楽器の音とか。これが「芸術」だ、と言われたってなあ、と筆者(わたくし式守)などは思ってしまうのである。しかし、専門家に認...
おすすめの一首

武藤雅治「女が一人御神籤をひく」おれも生きねばとなる短歌

強く生きているように見えるあきらかに四十歳(しじふ)半ばを過ぎてゐる女が一人御神籤(おみくじ)をひく(武藤雅治)六花書林『鶫』(なめくぢら式)よりこのような短歌に、わたくし式守は、偏愛してしまうところがある。ほしいままに空想がわくのである。...
おすすめの一首

糸川雅子「石けりの石わが影のなかを」ありのままのすがたを

ころがる石を詩として拾う夕暮れに子らが蹴りたる石けりの石わが影のなかをころがる(糸川雅子)砂子屋書房『糸川雅子歌集』/『水蛍』(日記)よりたとえば、歩道を歩いていて、誰かが足でちょっとどかした空き缶がころがる音がきこえる。すると、空き缶がわ...