
目 次
「ユーモア」は難易度が高い
形から入る男が年末の書庫の整理に作業着を買う(式守操)
田村元・選
題詠「ユーモアのある歌」より
NHK短歌の佳作に一首、採っていただきました。
お題は「ユーモア」でした。
才の足りないところに難易度の高いお題でした。
ユーモアを表現する方が、難易度は、高くありませんか。
短歌において、それはわたしにだけかも知れませんが、「ユーモアのある歌」にするつもりが、よしやそれが定型に沿っていても、オモロイ話の、単なる要約にな過ぎなくなるきらいがある。
完成までまこと試行錯誤の繰り返しになりました。
人を楽しませているつもりはない
それは天然ボケとは違うのよね~
本人はいたっていまじめ、マジなの、マジ
描かれる構造は単純で足りる
同僚の社員が、書庫の整理に、作業着を買った。
この一首は、ただそれだけです。
わざわざ買わなくてもいいのにねえ
たしかにまた着る機会もあろう。無駄遣いとも言えまい。
でも……、
家にあるジャージでいいじゃんねえ
この若者(まだ若かった)の好感度が俄然アップした。
そこまでするの、では?
1 そこまでする、か?
(草稿)
この人はそこまでするの? 年末の書庫の整理に作業着を買う
「この人」に驚いたことを言葉にしようとしていることはうかがえる。
会社の仕事の、たかが書庫の整理に、それはたしかに汚れるリスクはあろうが、ずいぶん本気なのである。
という気持ちに、人は、たったこれだけでも想像は届こうが、何と言ったらいいか、これではまだ、表現レベルに達していない。
釣りを始めて、竿がほしくなった。
買う。
これが表現とは言えないように。
もっとねばる必要がありそうだ
ここでもそうなの、では?
2 ここでもそう、か?
好きな釣りの竿を買うように、職場で、ふだんは要らないのに作業着を買った。
されば、そこまでするのか? ではない。
ここでもそうなの? ではないだろうか。
形から入ることを、世間は、否定しない。
しないが、でも、なにやらおかしくなることがある。
年末の書庫の整理だからと、ここでも形から入るなんて、と。
無用の行為が輝いた

かくして戯画は敬意が伴った。
うん、こんな調子で仕上げてみようか
完成へ
先の思考の過程を使ってみよう
形から入る、ってやつ
(完成)
形から入る男が年末の書庫の整理に作業着を買う
ふりかえって/そして、仲間へ
・表現以前にどんな思いがあるのか
・その思いに適合する語彙が見つかるまでねばる
・構造はいつもの例で単純で足りる
書庫整理=作業着購入
そう、ただそれだけ。
以上。
短歌を投稿していて、もうあきらめかけている人の参考になれば幸いです。
いっしょにいい作品を世に出せるようにがんばりましょうね。
