NHK短歌佳作「心」の完成までこのようにねばってみました

心とはどんなもの

過ぎ去った時を鎖のように巻く心が映るもろい背中に(式守操)

大森静佳・選:題詠「心」より

NHK短歌の佳作に、1首、採っていただきました。

お題は、「心」である、と。

「心臓」や「中心」でアプローチすることも考えないでもありませんでした。
が、わたしは、「心」一字を表現したい。

「心臓」って何?
「中心」と言えばたとえばどんなこと?

たとえば人前で、あまりの緊張に、心臓が苦しくなることがある。
かと思えば、天才的なスピーチを披露することもある。

酒席で、あまりの緊張に、隅のそのまた隅で委縮していることがある。
かと思えば、天才的なしゃべくりで座を盛り上げることもある。

どっちもつまんない。

「心」は?
半世紀以上の時を、「心」について考えなかった日がない。

だとすれば……、

一首の完成までねばれるのではないか

今回も、短歌を始めて、初の採用を目指している人の参考に、歌作過程のレポートを

心が映る目と背中

NHK短歌の佳作歌で掲載されました③

背中は、人に、心を見せてしまわないか。

たしかに目は口ほどに物を言おう。
でも、隠せる。

背中は?
背中は、心を、絶対的に隠せないものではないだろうか。

背中はもろい。

アタリマエだ。人一人の人生の心を負っている

完成までは2つのハードルがあった

どんなに心の負担があるか

NHK短歌の佳作歌で掲載されました③

まず上句から

どんなに心の負担があるかをいかに表現したらいいのか

(草稿)

あちこちに絆創膏を貼りつけた

ぎりぎりまではこれでいこうとしていた。
でも、本人(わたくし式守であるが)は、納得していなかった。

たしかに「心」を表現しようとしてはいるようだ。
衒われた奇もない。

納得していなかったのはなぜか、それを、どうにもうまく説明できないのであるが、要は、こうじゃないかと。

わたくし式守に、「心」は、絆創膏を貼りつけた程度ではない。

心と言えば、わたしに、もはやこうだ。

(改案)

ぐるぐると鎖を巻いているような……

もっとねばりたい

「きみの」は必要か

NHK短歌の佳作歌で掲載されました③

次に下句

(草稿)

心が見えるきみの背中に

きみの背中?
上句が、

あちこちに絆創膏を貼りつけた

であれば、これでもいい。

ほんとうは傷だらけで生きているきみの心が見えるよ、と。
そばにいるよ、と。

そして、ぎりぎりまでは、これでいこうとしていたのである。
でも、本人(わたくし式守であるが)は、納得していなかった。

わたしの生き方が、これを、認めていないのである。
絆創膏だらけの心が目に見えた、と。されば、追いかけてうしろからでも抱きしめよ。

そういう心からの動きを歌にするべきなんじゃないの

次の草稿の「心」は切り捨てる

(脚下)

あちこちに絆創膏を貼りつけた心が見えるきみの背中に

完成

検討

「ぐるぐると鎖を巻いているような」を使うべきか?

待て

「ぐるぐると」よりも経過の時間が帯びているものにしたい。

(完成)

過ぎ去った時を鎖のように巻く心が映るもろい背中に

ほんとうに歌にしてみたいものでなければ、表現されたものに至らないのだ。

そして、表現しないではいられないものでなければ、そもそも完成を見ない。

仲間へ

チェックリスト

・ほんとうに歌にしてみたいものを

・それを見極めるまでねばること

心に鎖=背に見える

そう、ただそれだけ。


以上。
歌を投稿していて、もうあきらめかけている人の参考になれば幸いです。
いっしょにいい作品を世に出せるようにがんばりましょうね。

NHK短歌の佳作歌で掲載されました③

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