
目 次
3回目のチャレンジの犬
内にある波の光を描き出す舌でかがやく水をのむ犬(式守操)
松村正直・選:題詠「犬」より
今回は、佳作秀歌で採っていただきました。
佳作より掲載順位が早かった。
むろん入選の方がいいに決まっている。
と同時に、佳作よりうれしかった、というのも本音のところにある。
ただ、入選だとか佳作だとか、そんなことよりも、非才を嘆いて投稿を続けているところに、わたくし式守の名で自作が掲載されたことは、大きく構えるようであるが、わが人生に、なによりの褒美になりました。
3度目の正直はほんとうにあった
次の2首を、それぞれ、別の機会に投稿した経験があります。
1首目
さしだした器の水を飲む犬がひたすら動く舌をずらした
2首目
その舌で犬がこころをうちならす水のおもてに清麗のあり
どちらも落選だったわけですが、この落選の経験を活かしました。

1首目の自己採点
さしだした器の水を飲む犬がひたすら動く舌をずらした
このまんまの光景を、わたくし式守は、目にとめたことがある。
たまに「舌をずらした」方が水分摂取が容易になるらしい。
たのしい。
いとしい。
しばらく眺めた。
で、これを、歌にしてみたかったのであるが……、
が、「さしだした器の水を」って要るだろうか。
そりゃ蛇口から落ちる水をがぶがぶしている犬もいようが、短歌の中で、「水を飲む犬」とくれば、だいたい「さしだした器の水」が、景として浮かばないか。
おれはそう浮かぶ。
だったらこれは要らないのではないか。
2首目の自己採点
その舌で犬がこころをうちならす水のおもてに清麗のあり
「器の水」はきれいだった。犬の舌はすごい。
だったらそれを歌にすればいい。
「ずらした」瞬間よりも「水のおもて」を。犬の舌が芸術的アイテムであることを。
その方向性で手直ししてみたが……、
が、「こころをうちならす」って何よ、ということですよ。
いや、わかる。
たしかに「こころをうちなら」しておいでなのだろうことを。
犬が、と。
にしたって、「こころをうちならす」の「こころ」とやらが、これでは、いくらなんでもうすらぼんやりしていないか。
かつ観念的で、わかるようでやっぱりさっぱりわからない。
同様に「清麗」って何。
これも気になる。
そして、何よりも、であるが、各々、たがいに呼応して読めないことも気になる。
犬の舌に芸術的アイテムを覚えたことに迫ろうとはしたのであるが……、
ただし
1首目よりすこしは表現しようと試みた痕跡はあるか。
完成へ
(完成)
内にある波の光を描き出す舌でかがやく水をのむ犬
1 どんな水かは要らない
1首目は、これで、ほとんど削られた
2 水は舌が描く
削られて浮いた音数に、もともと美しい水が内にある犬が舌でそれを出現させた、とした
そして仲間へ
・表現したいポイントを一つに絞る
・絞ったことで浮いた音数を絞ったポイントをもっと表現することに使う
犬の舌=水を飲む+光を生む
そう、ただこれだけのこと。
以上。
短歌を投稿していて、もうあきらめかけている人の参考になれば幸いです。
いっしょにいい作品を世に出せるようにがんばりましょうね。
