
目 次
わたしへの負い目に
お荷物でごめんなさいと言う妻の体重さらに減ってしまえり(式守操)
選者:黒瀬 珂瀾(24.04.01)より
3席でした。【評】が付きました。
【評】ハンデを抱える妻を懸命に支える。心配なのは妻の身体だけでなく、自身を責めがちなその心だ。夫婦の苦悩に向き合う一首。
わたしの、またわたしたちのこれからを支える「評」になりました。
ありがとうございました。
ありがたいお言葉、ほんとうのほんとうにありがとうございました。
歌作動機/体重が減れば減るほど

お荷物なんかじゃない、と言ってあげるのはカンタンなことだ。
そんな風に思ってはいけないと。
だが、じゃあいいわね、となるものではない。
おかしな話なのは、体重が減れば減るほどに、その「お荷物でごめんなさい」の「お荷物」性の指数が上がってしまうことだ。
そんな自家撞着のわたしたちに、安寧を祈ってみたかった。
ではそれをどう表現すれば
1 そのままを上句に
どう表現も何も「お荷物でごめんなさい」この言葉をまずそのまま詠む。
2 下句の題材は
何をもって「お荷物」との自責の念が生じる。
病気の身だから
お金がかかるから
心配かけているから
もっと具体的に何?
何?
短歌なら祈りになる、と思ったのであるが。
短歌の力による抒情が。一首が終わっての余韻が。
で、下句をどうした
体重が減った。また減った。
こんな補足は不要であろうが、体重が増える悩みの一方で体重が減ってかなしむ人もいるのである。
妻は体重が減った。
もともとあるかなきかの体重がまた。
このあたりを下句にしてみようか。
が、一方にこんなのもあるか。
妻はまた痩せた。
もともとあるかなきかの脂肪をさらに失った。
体重?
痩せた?
どっちを詠もう?
どっちを?
完成へ
(完成)
お荷物でごめんなさいと言う妻の体重さらに減ってしまえり(式守操)
1 “体重”の方にした
脂肪が減った、
よりも、
体重が減った、の方が、韻文らしくなる気がした。
脂肪の多寡なんて相対よりも体重の数値の絶対を選んだ。
具体的に
こういうこと
脂肪がさらに減ってしまえり
これ、結句を、微妙に文語体にしている。
”脂肪”だと「が」なる助詞を使うことになる。
微妙な文語体に、この「が」は、わたくし式守的にすわりが悪い気がしたのである。
2 “また”は使わない
体重がまた減ってしまえり、
よりも、
体重さらに減ってしまえり、の方が、韻文らしい気がしたのである。
3 韻文らしい?
真に韻文らしいかどうか自分では計量できないが、結句を、そうしてみることは、それが祈りのようなものになってくれるのではないか、と。
と、思った、という話で、その成否は、わたしのすることではあるまい。
そして、仲間へ
・耳にかなしかった言葉をそのまま詠んでしまえ
・それがかなしくもなる背景に適したものを探せ
・構造は単純で足りる
妻は自分をお荷物と
が、体重がまた減る
そう、内容たるや、ただそれだけ。
以上。
短歌を投稿していて、もうあきらめかけている人の参考になれば幸いです。
いっしょにいい作品を世に出せるようにがんばりましょうね。
