
目 次
要は表現したか否か
どの星に降り立ったのか初めての吹雪のなかを一歩踏み出す(式守操)
佐佐木頼綱・選
題詠「踏む」より
MHK短歌佳作に一首、採っていただきました。
他のお題はどれも不採用でした。
早速、採っていただいたこの作品と比較してみました。
投稿時点ではそれなりに工夫して表現したつもりでも、改めて読み直してみると、そこに、工夫の痕跡がさしてないことに愕然としました。
・与太話を短歌の体裁にした段階で完成としていた
・かんたんにこれでいいと判断していた
・表現らしい表現の痕跡はこれのみだった
そこを踏まえて……、
妻のふるさと
妻が、雪国の出身である。
すごいんだ、あれ。
南国育ちの人も、テレビの報道番組あたりで、雪国の吹雪がどれだけすごいか目にしたことはあろう。
が、テレビ画面と現実に吹雪の中に立つのでは、同じ世界でも体感が違う。
実経験のなかった者に、動物としての本能が発動する。
すなわち恐怖。
初めて真冬に妻のふるさとに行った時に、わたしは、言葉を失った。
要するにすごいとの表現をしたい
(草稿)
初めての吹雪の中を駅前でナンタラカンタラ
「駅前で」としてみた。
たとえば都会から北国に来たことをさりげなく含めてみたわけであるが、要るか、これ。
どこからどこまでなんて、そんなものは、それを問われたらゆるりと説明すればよい。
そんなことより……、
駅前で何を思った?
すごいんだ、あれは、と
改稿①
すごいんだ雪国の雪初めての吹雪のなかを一歩踏み出す
もっと他に言い方がないか?
ほんとうに地球かここは、と
改稿②
ほんとうに地球かここは初めての吹雪のなかを一歩踏み出す
他の方の採用作品との比較でも

また、他の方の採用作品を読んでも、○や△のお題を、このように表現してみるのかと、自作の不採用の表現との差がはっきりと見られた。
具体的にどの作品とどう比較したかは、何かしら差し障りがあってはいけないので、ここに引かないが、採用されるか否かなんてことは、やっぱりこんなところにあるんだな、と。
差はシンプル
自作のどこがどうだめかを自分で具体的に指摘できるようになってきたのである。
が、それができれば苦労しない。
それができるようであれば名の知られた存在にそれもとっくになっていようか。
よその土地から来たところにしたい
改稿②だっていいっちゃあいい。
しかし、よその土地からちょうど来たところでこの吹雪です、との印象を持たせられれば、もっとよくならないか。
ひいてはもっと表現しているのではないか。
動詞を使うのはどうかなあ
ただし駅前で、じゃだめなわけ
(決定)
どの星に降り立ったのか初めての吹雪のなかを一歩踏み出す
そして、仲間へ
・それをどのように思ったのか、その言葉を、しっかり思い出してみる
・その言葉よりもっとよく表現できる言葉はないか、あれこれ試してみる
・と言って、一首内の構成は、単純で足りる
この吹雪≠同じ地球
そう、構成は、ただただそういうこと。
今回のレポートは以上です。
短歌を投稿していて、もうあきらめかけている人の参考になれば幸いです。
いっしょにいい作品を世に出せるようにがんばりましょうね。
