
目 次
「NHK短歌」について
毎週決められた題の短歌を全国から公募して、それを、選者が評価する。
放送
Eテレ・毎週日曜(午前6時)
再放送
Eテレ・毎週金曜(午後2時10分)
1 放送される入選が9首
2 入選から特選が3首
3 佳作が翌月のテキストに118首
4 佳作秀歌が翌月のテキストに8首
放送・掲載までのサイクル
募集の題の告知
テキスト『NHK短歌』及び公式ホームページ『NHK短歌』に、応募する題と締切日時が載っています。
入選の通知
番組から電話でお知らせをいただけます。
放送予定日のちょうど1ケ月前に電話が入ります。
自作であることと未発表作品であることの確認を求められます。
ついては、放送していいかの確認も求められます。
また、歌意の説明を求められます。
佳作と佳作秀歌の掲載
その題の放送があった翌月に発売される号に掲載されます。
毎月20日発売。20日が土日祝日であれば前日に繰り上げられます。
採用されないなあ
いくら送っても採用されないのはなぜ
放送されない、
と言っているのではない
そこまで望んでいないのである
佳作でいい
掲載されたい
季節に一首、あ、いや、半年に一首でいい
自分の作品がテキストに掲載されたらなあ
NHK短歌だけの話ではない
雑誌だって新聞だって
よっぽど才能がないらしい
やめちゃおうかなあ、短歌なんて、
と、思ったことが何度あったことか
採用されないのであれば……

また落選、そのようなおもいといかに折り合いをつけているか、それを記事にして、カテゴライズしてみました。

自分の短歌って何が欠けているのか、プロパーな歌人の作品からそれを探って、その記事をカテゴライズしてみました。
それでかどうか、最近は、少しだけ採られるように……
NHK短歌・佳作作品
松村由利子・選
題「耳」……佳作
正常に次ぐ正常の健診で一つ耳だけ衰えていた
佐佐木頼綱・選
「食器」……佳作
夕食の皿が並んだ食卓に薬を置いた手が箸を持つ
「負ける」……佳作
首位打者が不遇に耐えていた過去を首位を逃した彼は語った
「痛い」……佳作
叫ぶほど痛い注射と言っていた女医がなかなか呼んでくれない
「踏む」……佳作
どの星に降り立ったのか初めての吹雪のなかを一歩踏み出す
「ボール」……佳作
また一人ボール拾いが退部してレギュラーよりも駆けまわる夏
「チーム(仲間)」……佳作
十年を支社と電話で処理をした相手の生の声がいとしい
佐佐木定綱・選
「泣」……佳作
リモコンで神の如くにヒロインの死にゆく笑みの時間を止める
「運」……佳作
重心をやっと定めた子の傘が進む低さで追いかける雨
「折」……佳作
口ひげをほめたぶんだけ折り合いのつかない人と折り合いがつく
大述隆弘・選
「自由詠」……佳作
ぎらぎらと照りつける日に耐えている遠くを猫がとぼとぼ歩く
「話」……佳作
ガジェットの話を聞いてそうなのかショートケーキと思っていたら
「転」……佳作
剣尖のふきつける気をころばないほどの構えでうしろへながす
松村正直・選
「鼠・子」……佳作
尾のとれたマウスがひとつコードレス社会のなかで進化を遂げて
「蛇・巳」……佳作
この床を繁殖の地にからみあう蛇のごとしも家電のコード
寺井龍哉・選
「幼」……佳作
橋の上跳ねるなこどもきみは背に羽がないのがわからないのか
「美味しそうな歌」……佳作
買いものは妻に任せてスーパーのゴミ箱の横焼き鳥ごめん
「比」……佳作
亡き母の肩の高さにやわらかく梅がひらくを見おろしており
小島なお・選
「手紙」……佳作
墨の字の手紙のおもいふれがたし博物館の展示のごとく
「枕」……佳作
歯ブラシと同じ哲学やわらかい枕もあればかたいのもある
大森静佳・選
「心」……佳作
過ぎ去った時を鎖のように巻く心が映るもろい背中に
「まだ・もう」……佳作
水引きの結びのようにもう二度とゆるめられない母の両の手
「重」……佳作
ストローがグラスのふちによりかかるほどの重さといかず夫婦は
「眠り」……佳作
触れたならたちまち粉になりそうなうすい瞼が病にとじる
田村元・選
「ユーモアのある歌」……佳作
形から入る男が年末の書庫の整理に作業着を買う
「食べる」……佳作
昼食を逃してつまむおにぎりにコピーの音がひえびえひびく
佐伯裕子・選
「トイレ」……佳作
脳内のトイレマップはアプリより精密である頻尿のわれ
「ファミレス」……佳作
スプーンでプリンを食べたファミレスがロングアームで解体される
「ソファ(リビング)」……佳作
出生の秘密のようにきかされたこれがあなたのできたソファよ
笹公人・選
「カレー」……佳作
片頭痛またかと昼に十辛で食べるカレーのわが痛み止め
吉川宏志・選
「春の草」……佳作
地下鉄をはりめぐらせた人類の代表としてドクダミを抜く
短歌De胸キュン・掲載作品
佐伯裕子・選
「ライバル」……佳作
メダルへのターンの次のその次のそのまた次の人がライバル
栗木京子・選
「冷蔵庫」……佳作
冷蔵庫のポン酢しょうゆが正しくない位置にあったとつめたく妻が
「給食」……佳作
給食をガキ大将に多く盛る弟分の手指は小ちゃく
NHK短歌・佳作秀歌
松村正直・選
「犬・戌」……佳作秀歌
内にある波の光を描き出す舌でかがやく水をのむ犬
佐佐木定綱・選
「降」……佳作秀歌
降る雨に打たれて耐える詩があるを思い出しても時給変わらず
NHK短歌・放送作品
大述隆弘・選
「旅」……入選
再会は夏の薄着のままでいい旅の途中で友人を訪う
評●旅先で友人の家を訪問しようと思い立つ。準備もなく服装も軽装のままだけれど自分の気持ちに正直になって会いにいこう。そんな気持ちを素直に歌う。
小島なお・選
「石」……特選(3席)
爆発を封じたようにぬれているしずかな朝のねむれる石よ
評●石の静的なイメージと爆発の動的なイメージが対照的であり、同時にどこか調和してもいます。この直感的な感覚を支えているのは「ぬれている」という描写でしょう。生々しく息づく朝の石。