
目 次
この弟をいっぺんで好きになる
弟はわれの手相をしげしげと見しのち低く物言わんとす(花山周子)
青磁社『風とマルス』
(耳)より

姉の手相に何かを見た。
手相見なのかどうかは知らないが、弟に、そのおぼえが、多少はあるのだろう。
吉凶禍福の凶と禍が<わたし>の手相にあったのか。
どこまで本気なのか
しかし、ふざけてそうしただけだとしても、弟の、骨肉のやさしさが、ここでは、よくうかがえると思うのである。
花山周子の、このような感性のふくらみに、わたくし式守は、愛執を持っている。
この弟を好意的にしか見られない

ご機嫌な弟のハミング、スピッツから美空ひばりになりゆくあわれ(夏、午前)
スピッツは何の曲だったんだろう。
君と出会った奇跡が
スピッツ『空も飛べるはず』
この胸にあふれてる
作詞・草野正宗
こっちじゃないかもなあ
大きな力で
スピッツ『ロビンソン』
空に浮かべたら
ルララ宇宙の風に乗る
作詞・草野正宗
もっと他の曲かなあ
まあいいや
人は哀しい哀しいものですね
美空ひばり『愛燦燦』
作詞・小椋佳
こっちじゃないかもなあ
ああ川の流れのように
美空ひばり『川の流れのように』
とめどなく
作詞・秋元康
もっと他の曲かなあ
まあいいや
同じ趣味
人魚姫の弟がいた

からだじゅうが人魚姫のようだと弟は食卓に言う昼起き抜けに(人魚姫)
若いとほんとうによく眠れるのである。
わが次兄も、おおむかしに、30時間も寝て、起き上がると、6時間も昼寝してしまったか、と。
にしても……、
なるほどなあ
人魚姫
弟はわれの手相をしげしげと見しのち低く物言わんとす(耳)
話題の転換に不器用な弟ではない。
姉へのやさしさを下敷きにした、これは、骨肉の声調というものなのである。
まことまことにいい歌に、心が大きく動いて、涙を催さずにいられない。
